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桃子喜んでいいの?
宗一郎いいさ。
桃子……ありがとう。
宗一郎僕にも言わせてくれ。……ありがとう。
と言うと、宗一郎は立ち上がり、再び窓辺へ。
桃子(も、立ち上がり)どうしてお礼なんか言うのよ?
宗一郎僕はキミを好きになって良かった。思考スキャナーを使ったことは後悔してるけど、
キミを好きになったことは後悔していない。だからお礼を言ったんだ。
桃子あ、あたしも……あなたに好きになってもらって、良かったわ。
宗一郎(窓の前で背を向けたまま)思考スキャナーなしで、ひとつ聞いてもいいかな?
桃子なに?
宗一郎キミが……この先いつか、僕を好きになってくれる。そんなこと絶対ありえない?
桃子それは……(下を向く)
宗一郎答えたくなければ、別にいいんだ。
桃子絶対とか、そういうことは言えないけど……
宗一郎……けど?
桃子(俯いて)たぶん……ないと思う。


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宗一郎……そうか。
桃子ごめんね。
桃子、申し訳なくて、思わず背中を向ける。
宗一郎……。
桃子(背を向けたまま)あたしも一つ……聞いていい? さっきも聞いたけど。
宗一郎……。
桃子あたしの、どこが好きだったの?
と言って、振り返る。と、ちょうどその時---
宗一郎の体が、力を失ったようにユラリと崩れ、床に倒れる。
ドシン。
桃子えっ? あ……どうしたの?
慌てて駆け寄ると、薬の瓶と、こぼれた錠剤が散乱している。
桃子ちょ……ちょっと。何飲んだのよ、一体。
ぐったりしている、宗一郎。呼吸をしていない。
桃子ね、ねえ! ねえ!!
宗一郎の顔をパンパン叩く。だが、ぐったりしたまま。
桃子……なんてことするのよ、まったく。覚悟って、このことだったの?


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桃子、宗一郎の心臓に耳を当ててみる。
桃子まだ生きてるわ、いまならまだ聞ける。
と、立ち上がる。そして、自分が縛られていた椅子まで一目散。
思考スキャナーの仮面を手にすると、すぐに戻って来て、
桃子えいっ。(と、仮面を宗一郎にかぶせる)
バチッと留めると同時に、グォン、という音がワゴンから聞こえる。
思考スキャナーには、電源が入ったままだ。
ワゴンの機器から光線が放たれる。
それが、窓の前で像を結び、やがて、宗一郎の姿へと---。
宗一郎H(ボーッとして)……?
桃子で……出た……。
桃子、本物の宗一郎の耳元で大声をあげる。
桃子最後に、ひとつだけ聞きたかったの!! ……聞こえてる!?
宗一郎はぐったりしたままだ。だが、さらに大声で、
桃子あたしの……!! あたしの、どこが好きだった!?
宗一郎……(薄く目を開ける)
桃子ねえ!!(と、ブンブン宗一郎の身体をゆする)


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すると、立体映像の宗一郎Hが、
宗一郎H(ボーッとしたまま)キ……ミ……の?
桃子、宗一郎の身体を置いて立ち上がる。立体映像の宗一郎Hに向かって、
桃子そう。あたしの、どこが好きだったか、あなたの本音を聞きたいのよ!! 私のどこ?
どこに一番ひかれた?
宗一郎H、ボーッとしたまま、途切れ途切れに呟く。
宗一郎Hす……ぐや……らせてくれそ……な……
桃子え……つ?
宗一郎H、最後の力を振り絞るように、声を出し、
宗一郎Hすぐ……やらせてくれそうな……トコ……
桃子(唖然として)………。
宗一郎Hわ……判ってないね、キミ……。男なんて……そんなもんさ……。
宗一郎H、ニヤリと笑い、消えてしまう。
その瞬間床に倒れていた本物の宗一郎も、ガクリと絶命する。
シーンと静まり返った部屋の、窓の前。
桃子は、いつまでもただ呆然と立ち尽くしている。
 〔第三話・完〕


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