Top
<<>>
1234567・8・9


山ロクンHぐぉわーっ!!
宗一郎ん? 誰だ? こいつ。
桃子H山口くんよ。
宗一郎山口くん?
桃子Hうん山口くん、本命の。
宗一郎……本命の?
桃子Hそうか、勘違いしてたわ、あたし。
宗一郎どういうこと?
桃子H……このソファ、山口くんちにあるソファだった。
宗一郎じゃあ……貧乏ユスリは?
桃子H食乏ユスリも山口くんだったわ。
宗一郎……。
桃子Hごめんね。
二人、気まずい空気。
山ロクンHうぐがぉーっ!!
部屋の中をのたうち回る山ロクンHの声だけが、むなしく響く。


29


●マンションの一室(夕方)

 
夕方になって---
解いたロープが散乱しており、本物の桃子が縛られていた椅子の上には「思考
スキャナーの仮面」だけが置いてある。
男と女は---
窓に立つ宗一郎。部屋には背中を向けて、外を見ている。
ドアの前に桃子。窓から遠く離れた位置でじっと考えている。
お互いに背中を向け、重苦しい雰囲気。
桃子気が済んだ?
宗一郎(振り返る)……ん?
が、桃子は宗一郎に背中を向けたまま。
桃子自分を騙した女の頭の中、思う存分読み取って……。楽しかった?
宗一郎キミが僕にそんなこと言う資格、あるのか?
桃子男と女なんて……結局は騙し合いじゃないの。
宗一郎騙し合い?……僕はキミを騙した覚えはないけど?


30


桃子あなたにだって、あたしには見えないことや聞こえないこと……知らないことが沢山
あるわ。
宗一郎僕は隠しごとは嫌いなんだ。何でも見せるし、何でも聞かせるさ。
桃子じゃあ、あたしのどこが好きだったの? 好きだ好きだって何回も聞いたけど、どこ
が好きなんて一度も聞かせてもらわなかったわ。
宗一郎そうだったっけ? ……でも、別に隠してたわけじゃないよ。
桃子……男と女の間には、知らないことなんか沢山あるし……あるべきだと思う。
宗一郎そうか……そうかもしれないな……。僕にはよく判らないけど。
宗一郎ゆっくりと桃子に近づいてくる。
宗一郎キミが言ったように、キミのことを知る以前に、僕は女性のことを何も知らなかった
んだ。男と女のことについて、何も言う資格ない……。
桃子あたしだって……。あたしだって、男の人のことなんか全然判ってないけど……
桃子、なんだか悲しくなってくる。
宗一郎そんなことない。キミは僕よりずっと大人だよ。今日はそれがよく判った。
宗一郎、桃子のうしろまで来ると、急に座り込む。
宗一郎悪かった。僕が馬鹿だったよ……。
桃子……えっ?(と、振り返る)


31


 
と、土下座をしている宗一郎。
宗一郎すまなかった。
桃子な……何言ってんのよ。謝るのは私のほうじゃない(と、自分も座り込む)
宗一郎思考スキャナーを使うなんて……ひどいことした。
桃子ひどいのはもともと私よ。私の方こそ……
桃子、突然、宗一郎に抱きついて、
桃子ごめんなさい。
宗一郎……!?
桃子ごめんね。
宗一郎、笑いながら桃子を離して、
宗一郎……僕はさ、君がそうやって、ごめんね、って言うの、好きなんだ。
桃子え?どうして?
宗一郎……どうしてかな?
桃子謝るのは、その前に悪いことしてるからよ。
宗一郎そうだよな……。でも、キミにごめんねって言われると、全部許せる気がして。
桃子だからあたし、こんなずるい女になっちゃったのかな?
宗一郎ホントにずるい女なら、いくら謝っても誰も許してくれないよ。


32


<<>>
1234567・8・9