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●マンションの一室

椅子に縛られ、「思考スキャナー」をつけられた桃子。
その横に、立体映像を映し出す機器を乗せたワゴンがある。
宗一郎が、それに手を伸ばし、電源をオンにする。
と、グォン、という音がして機械が立ち上がる。
ホログラフィー光線が、窓へ向かって飛び出し、
宗一郎あ……っ。
窓の前にもう一人の桃子……立体映像の「桃子H」が現れる。
桃子H(ボーツとして)……?
宗一郎で……出た……。
桃子(仮面の中で)……?(首を傾げる)
宗一郎、仮面の桃子に向かい、
宗一郎それじゃ、まず基本的なことから質問するよ。桃子ちゃんは、僕のどこが好きなの?
仮面の下の本物の桃子は、口を塞がれていて何も言えない。
しかし窓の前では、立体映像の桃子Hが、
桃子H好きなところ?そうね……、気前がいいところ、かな?


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宗一郎気前がいいところ?……他は?
桃子Hそれ以外は、別に。
宗一郎……えっ?
桃子H別にないけど?
宗一郎別にない?……そんな。
桃子Hだってセックスもうまくないし。
宗一郎なっ……
桃子Hなにより早いし。
宗一郎は、早い……?
桃子Hあらっ?……(次第に青ざめて)な……何コレ?
仮面の桃子の様子にも、落ち着きがなくなる。
桃子(仮面の中で)ん……ん?
桃子H…やだっ、あたしの考えてることが全部聞こえちゃってるわけ?
宗一郎そうか、早いのか僕は……。知らなかった……。
桃子Hやばいわ。これじゃあ、全部バレちゃうじゃないの。
宗一郎……えっ?
宗一郎、その言葉を逃さず、窓の前の桃子Hに駆け寄る。


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宗一郎……バレちゃう?
桃子Hうん、バレちゃう。そうなったら、まずいわ。
以降、宗一郎は立体映像の桃子Hと、問答することになる。
宗一郎な……何がまずいんだい?
桃子Hあっ、だめだ……。まずいって考えても、まずいんだ。
宗一郎だから何がまずいんだい?
桃子Hまずいっていうことを頭で考えないようにしなきゃ。
宗一郎だめ。だよ、考えてくれなきゃ。
桃子H考えないようにしなきゃって考えても、わかっちゃうのね?
宗一郎そうだよ。だから、素直に考えたほうがいい。
桃子Hそれは困るわ。何か違うこと考えなくっちゃ。えーとえーっと……そうだ、おいしい
もの。おいしいもの食べてること考えよっと(と、目を閉じる)
その瞬間、ワゴンの機器から光線が差し、桃子Hの前に立体映像が、
それは、手打ちそば。そして、そば屋のテーブルと椅子。
桃子Hあっ、長寿庵のおそばだ。
宗一郎……え?
桃子Hいただきまーす。(と、椅子に座る)


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そして、立体映像のそばをズルズルと食べ始める。
宗一郎あ……あのさ、桃子ちゃん。そばなんか食べてる場合じゃないよ。僕とキミの愛につ
いて、もう少し話し合わないと……
桃子H、ズルズルと食べながら、
桃子Hその話題について考えると、あたしの立場がやばいのよ……って、そう考えるとそう
言っちゃうから、それもやばいのよ。あーっ、おいしいおそばだわー。
桃子H、自分の思考を振り切るように、ズルズル。
宗一郎ね、桃子ちゃん、僕たちの出会いは、雑誌が主催したパーティーだったよね?
桃子Hあたしあのパーティー常連だったのよ。金持ちが集まるって有名だったから。
宗一郎じょ、常連?……あの時、初めて来たって言ってなかった?
桃子H(ごまかすように)あーっ、おいしいおそばねっ(とズルズル)
宗一郎、昔を思い出すように遠い目をして、
宗一郎……君は隅っこでシャンパン片手にモジモジしてたね……。
桃子H隅でモジモジ、コレ基本ね。コレが一番、声かけられやすいからね。
宗一郎そうか、基本なのか。(急に冷めて)……えっ?
桃子Hえっ?あ……そう。だ、あの時飲ん。だシャンパンって、ホントにおいしかったの。
と、その時そば屋のテーブルに、光線があたって、


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