| | 倒れた桃子に、不気味に近寄る男・宗一郎(35)。 |
| 宗一郎こそ、この部屋が似合うお金持ちの青年に見える。 |
| 宗一郎 | 勝手に部屋に入って待ち伏せしてたことは謝るよ……。しかもキミをこんな目に合わ |
| せて申し眠ないと思ってる。 |
| 桃子の体を優しく抱き起こし、椅子に座らせる宗一郎。 |
| 宗一郎 | だけどさ、桃子ちゃん。あんまりと言えばあんまりじゃないか。ねるとんパーティー |
| で知り会ってから一年間、僕は何でもキミの望みを叶えて来ただろう? |
| 宗一郎、新しいロープを取り出す。 |
| 桃子 | (それを見て)んんん!! |
| 宗一郎 | 大丈夫、きつく縛らないから。これで最後だよ……。 |
| 宗一郎、桃子の身体を、椅子に縛りつけながら、 |
| 宗一郎 | この一年間、宝石が欲しいと言えば買ってあげたし……海外旅行に行きたいと言えば |
| 行かせてあげた……車も買ってあげたしヨットも買ってあげた……。キミが冗談っぽ |
| く、セスナが欲しいわあーって言った時だって、僕は真剣に悩んだんだ。……それも |
| これもキミが僕と結婚してくれる、そう約束してくれたからじゃないか。それなのに |
| ……それなのに、なに僕の前から姿を消しちゃうなんて……!! あんまりだよ!! |
| ガバッ。宗一郎、感情が高まって桃子のカラダに突然しがみつく。 |
| 桃子 | (驚いて)んん!! |
| 宗一郎 | ああ……でも、見つかって良かった……。 |
| 桃子の全身を撫でまわしながら、 |
| 宗一郎 | 探したよ桃子ちやん。この一ヵ月、僕は必死にキミを探し続けた……。キミの通って |
| いる大学にも探しに行ったんだ。そしたら、職員がキミの学籍なんかどこにもないな |
| んて言うんだよ……。挙げ句の果てに、キミがニセ学生じゃないかなんて……。冗談 |
| じゃない。キミが僕にウソをつくわけないよ……。そうだよね? ねっ? ねっ? |
| 桃子 | (顔を背けて)んんー!! んーっ!! |
| 宗一郎 | ところで、桃子ちゃん……。いつからこんな豪華なマンションに住んでるの? |
| 桃子 | (ドキッとして)んっ!? |
| 宗一郎、部屋中をうろうろ歩き回って、 |
| 宗一郎 | おかしいな……。僕が贈ったプレゼントは、どこに置いてあるんだろ? パリの画廊 |
| で買ってあげたゴッホの絵はどこ? オークションでセリ落としたジョンレノン愛用 |
| のグランドピアノも見あたらない。いや、もちろん僕はキミを信じてるよ。全部売り |
| 払ったなんてこと、あるわけないよ。でも、もしかすると…… |
| ピタッ。突然立ち止まった宗一郎。ゆっくりと振り返り、桃子を見つめる。 |
| 桃子 | (震えて)……!! |
| 宗一郎 | もしかするとキミにも、僕に隠していることがあるんじゃないか? ……なんて妙な |
| 想像しちゃって、この頃どうも落ち着かなくってさ。 |
| ガラガラガラ……宗一郎、傍にあったワゴンを桃子の元へ運ぶ。 |
| 宗一郎 | ……だから今日は、キミが考えていることを包み隠さず知ろうと思ってね。それで、 |
| ちょっと乱暴なマネをしちゃったわけ。でも大丈夫、もう危険なことはしないから。 |
| そのワゴンには、「思考スキャナー」など機器類が乗っている。 |
| 桃子 | (見て)……? |
| 宗一郎は、思考スキャナーの仮面を両手で持ち、笑顔で桃子に近づく。 |
| 宗一郎 | これはね、人間の思考を読み取る「思考スキャナー」っていう機械なんだ。警察が、 |
| ウソ発見器として使っている安全なものだよ。 |
| 桃子 | (頭に仮面をかぶせられ)んんん……っ!! |
| 宗一郎 | 怖がらなくてもいいんだよ。僕は、裸のキミを知りたいだけなんだから……。 |
| 仮面の下に完全に隠れてしまう、桃子の顔。 |
| その姿を、優しく見つめる宗一郎。男と女、二人の姿に、 |
| ---タイトル「第三話男と女」 |