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被害者の女Hや……やめて……殺さないで……
容疑者Hへっへっへっへ、死んでもらうぜ。
女刑事そう……そうなの。
と、女刑事が、仮面をかぶった容疑者の首を、突然掴む。
容疑者(仮面の中で)……な……なんだ?
女刑事(ドスの効いた声で)そうやって殺しやがったのか、てめえ? あー?
容疑者H、拳銃の引き金に指をかけ、
容疑者Hああ、そうだよ!! こうやって殺したんだよ!!
バーン、と音がして立体映像の銃弾が発射される。

●マンションの一室(朝)

 
ドタッ---まるで、その銃撃に倒れたように、桃子(20)が床に倒れる。
桃子の手足は縛られ、身動きがとれない。
桃子んんん……!! んんん……!!
何かを叫んでいるが、口には「さるぐつわ」がしてあって、聞こえない。
ここは、桃子が住むマンション。若い女性が暮らすには、かなり豪華な部屋。


5


 
倒れた桃子に、不気味に近寄る男・宗一郎(35)。
宗一郎こそ、この部屋が似合うお金持ちの青年に見える。
宗一郎勝手に部屋に入って待ち伏せしてたことは謝るよ……。しかもキミをこんな目に合わ
せて申し眠ないと思ってる。
桃子の体を優しく抱き起こし、椅子に座らせる宗一郎。
宗一郎だけどさ、桃子ちゃん。あんまりと言えばあんまりじゃないか。ねるとんパーティー
で知り会ってから一年間、僕は何でもキミの望みを叶えて来ただろう?
宗一郎、新しいロープを取り出す。
桃子(それを見て)んんん!!
宗一郎大丈夫、きつく縛らないから。これで最後だよ……。
宗一郎、桃子の身体を、椅子に縛りつけながら、
宗一郎この一年間、宝石が欲しいと言えば買ってあげたし……海外旅行に行きたいと言えば
行かせてあげた……車も買ってあげたしヨットも買ってあげた……。キミが冗談っぽ
く、セスナが欲しいわあーって言った時だって、僕は真剣に悩んだんだ。……それも
これもキミが僕と結婚してくれる、そう約束してくれたからじゃないか。それなのに
……それなのに、なに僕の前から姿を消しちゃうなんて……!! あんまりだよ!!
ガバッ。宗一郎、感情が高まって桃子のカラダに突然しがみつく。


6


桃子(驚いて)んん!!
宗一郎ああ……でも、見つかって良かった……。
桃子の全身を撫でまわしながら、
宗一郎探したよ桃子ちやん。この一ヵ月、僕は必死にキミを探し続けた……。キミの通って
いる大学にも探しに行ったんだ。そしたら、職員がキミの学籍なんかどこにもないな
んて言うんだよ……。挙げ句の果てに、キミがニセ学生じゃないかなんて……。冗談
じゃない。キミが僕にウソをつくわけないよ……。そうだよね? ねっ? ねっ?
桃子(顔を背けて)んんー!! んーっ!!
宗一郎ところで、桃子ちゃん……。いつからこんな豪華なマンションに住んでるの?
桃子(ドキッとして)んっ!?
宗一郎、部屋中をうろうろ歩き回って、
宗一郎おかしいな……。僕が贈ったプレゼントは、どこに置いてあるんだろ? パリの画廊
で買ってあげたゴッホの絵はどこ? オークションでセリ落としたジョンレノン愛用
のグランドピアノも見あたらない。いや、もちろん僕はキミを信じてるよ。全部売り
払ったなんてこと、あるわけないよ。でも、もしかすると……
ピタッ。突然立ち止まった宗一郎。ゆっくりと振り返り、桃子を見つめる。
桃子(震えて)……!!


7


宗一郎もしかするとキミにも、僕に隠していることがあるんじゃないか? ……なんて妙な
想像しちゃって、この頃どうも落ち着かなくってさ。
ガラガラガラ……宗一郎、傍にあったワゴンを桃子の元へ運ぶ。
宗一郎……だから今日は、キミが考えていることを包み隠さず知ろうと思ってね。それで、
ちょっと乱暴なマネをしちゃったわけ。でも大丈夫、もう危険なことはしないから。
そのワゴンには、「思考スキャナー」など機器類が乗っている。
桃子(見て)……?
宗一郎は、思考スキャナーの仮面を両手で持ち、笑顔で桃子に近づく。
宗一郎これはね、人間の思考を読み取る「思考スキャナー」っていう機械なんだ。警察が、
ウソ発見器として使っている安全なものだよ。
桃子(頭に仮面をかぶせられ)んんん……っ!!
宗一郎怖がらなくてもいいんだよ。僕は、裸のキミを知りたいだけなんだから……。
仮面の下に完全に隠れてしまう、桃子の顔。
その姿を、優しく見つめる宗一郎。男と女、二人の姿に、
---タイトル「第三話男と女」


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