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会社員「ん?」

胸ポケットを探る。
そこには現金が入っている。

会社員「おーっ(と喜ぶ)」
金田の声「それにしても何でそんなことを……」
亜希子の声「わからないわ。長年身につけたテクニックで、何で そんなネズミ小僧みたいなことをするのか」
15 兄妹の家・縁側

 
再び、二人のいる縁側。

金田「うーむ」
亜希子「おかげでもう、お金がこれしかないの」

亜希子、電子マネーを見せる。
表示は「1,050,242円」

金田「百万ちょっとか……」
亜希子「……うん」

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金田「現金中毒だな」
亜希子「現金中毒?」
金田「最近、そういう病気、増えてるらしいよ」
亜希子「そうなの?」

そこへ、竜二が帰ってくる。

亜希子「あっ、お兄ちゃん」
金田「お帰りなさい、お兄さん」

竜二、ドスンと居間に腰を下ろす。

竜二「……」

その顔つきば、まさに病人のようだ。
部屋に重い空気が立ち込める。
亜希子、たまらなくなって、
(竜二の横へ)

亜希子「(優しく〉きょ、今日も沢山、して来た? 逆スリ」
竜二「ああ、してきた……」
亜希子「そう……」(金田見る)

二人の向かいに金田来る。
急にヘラヘラ笑い出す、竜二。

竜二「気持ちいい……。芸術的とも言える手さぼきで他人の懐

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 にサッと現ナマを忍ばせる。俺が立ち去った後、そいつがその金を数えるんだ……。(縁側へ)現ナマのあの手触り……そしてあの匂い……ああ!! 何という快感なんだろう」
亜希子「お、お兄ちゃん……」(と立ち上がり縁側へ)
竜二「亜希子、もっと現ナマだ。もっと沢山現ナマを!!」
亜希子「駄目よお兄ちゃん。このままじゃ、折角スリで貯めたお 金、全部使っちゃう」
竜二「じゃ、またスろう。電子マネーをどんどんスッて、どん どん現ナマをバラまくんだ」
金田「お兄さん、なんでそんな無意味なことをするんです?」
竜二「無意味なもんか。現ナマをバラまいて、世の中を現ナマ だらけにしてやるんだ。そうすればもうあんな薄っぺら な電子マネーなんかスらなくて済むんだ」
亜希子「そんな……ウッ(と突然、口を押さえて)」
竜二「な、なんだ?」

亜希子、居問から走り去る。
×    ×    ×

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再び、居間に座った、三人。

竜二「……妊娠?」
亜希子「(頷く)」
金田「ぼ……僕たちに子供が出来たのか…・・・」
亜希子「(嬉しそうに)うん」
竜二「おめでとう」
亜希子「ありがとう」
金田「お兄さん、僕たち、結婚します」
竜二「ああ、妹を頼むよ」
金田「はい」
竜二「そうだ、これ……」

竜二、現金を金田に手渡す。

竜二「少ないけど、結婚祝いだ」
金田「いいですよ、そんな」
竜二「まあまあ」

金田、手にした現金を見つめる。

金田「……」

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