| 会社員 | 「ん?」 |
| 会社員 | 「おーっ(と喜ぶ)」 |
| 金田の声 | 「それにしても何でそんなことを……」 |
| 亜希子の声 | 「わからないわ。長年身につけたテクニックで、何で そんなネズミ小僧みたいなことをするのか」 |
| 金田 | 「うーむ」 |
| 亜希子 | 「おかげでもう、お金がこれしかないの」 |
| 金田 | 「百万ちょっとか……」 |
| 亜希子 | 「……うん」 |
| 金田 | 「現金中毒だな」 |
| 亜希子 | 「現金中毒?」 |
| 金田 | 「最近、そういう病気、増えてるらしいよ」 |
| 亜希子 | 「そうなの?」 |
| 亜希子 | 「あっ、お兄ちゃん」 |
| 金田 | 「お帰りなさい、お兄さん」 |
| 竜二 | 「……」 |
| 亜希子 | 「(優しく〉きょ、今日も沢山、して来た? 逆スリ」 |
| 竜二 | 「ああ、してきた……」 |
| 亜希子 | 「そう……」(金田見る) |
| 竜二 | 「気持ちいい……。芸術的とも言える手さぼきで他人の懐 |
| にサッと現ナマを忍ばせる。俺が立ち去った後、そいつがその金を数えるんだ……。(縁側へ)現ナマのあの手触り……そしてあの匂い……ああ!! 何という快感なんだろう」 | |
| 亜希子 | 「お、お兄ちゃん……」(と立ち上がり縁側へ) |
| 竜二 | 「亜希子、もっと現ナマだ。もっと沢山現ナマを!!」 |
| 亜希子 | 「駄目よお兄ちゃん。このままじゃ、折角スリで貯めたお 金、全部使っちゃう」 |
| 竜二 | 「じゃ、またスろう。電子マネーをどんどんスッて、どん どん現ナマをバラまくんだ」 |
| 金田 | 「お兄さん、なんでそんな無意味なことをするんです?」 |
| 竜二 | 「無意味なもんか。現ナマをバラまいて、世の中を現ナマ だらけにしてやるんだ。そうすればもうあんな薄っぺら な電子マネーなんかスらなくて済むんだ」 |
| 亜希子 | 「そんな……ウッ(と突然、口を押さえて)」 |
| 竜二 | 「な、なんだ?」 |
| 竜二 | 「……妊娠?」 |
| 亜希子 | 「(頷く)」 |
| 金田 | 「ぼ……僕たちに子供が出来たのか…・・・」 |
| 亜希子 | 「(嬉しそうに)うん」 |
| 竜二 | 「おめでとう」 |
| 亜希子 | 「ありがとう」 |
| 金田 | 「お兄さん、僕たち、結婚します」 |
| 竜二 | 「ああ、妹を頼むよ」 |
| 金田 | 「はい」 |
| 竜二 | 「そうだ、これ……」 |
| 竜二 | 「少ないけど、結婚祝いだ」 |
| 金田 | 「いいですよ、そんな」 |
| 竜二 | 「まあまあ」 |
| 金田 | 「……」 |