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亜希子「またスリをしたの?」
竜二「……」
亜希子「かっこいい(と呟く)」

突然晴れやかな笑顔になる、二人。
声のトーンも会話のテンポも一段と上がって、

竜二「よせよ、照れるじゃないか」(歩き出し)
亜希子「さすがはお兄ちゃん。スリで捕まったくせに、出所してくる時にまたスリをするなんて、カッチョ良すぎる」
竜二「どうだ、おまえは。スッてる? ん? スッてるか?」
亜希子「ううん。最近はちっとも……」
竜二「どうして?」
亜希子「お兄ちゃんがパクられてから、なんだか怖くて」
竜二「そっか。でも安心しろ。もうあんなドジは踏まないよ。今日から二人でばんばんスろう! なっ」
亜希子「そうね、ばんばんスろう。あはは」

二人、声を出して笑う。

竜二の声「俺たち兄妹は、両親をなくしてから、二人でスリをし


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 て生計を立ててきた。しかし、まさか5年の間に、現金 がこんなにおしゃれなカードになっていたなんて……」

サブ・タイトル「第6話 おしゃれ泥棒」

 提供・CM

4 兄妹の家・居間

 
純和風の、居間。
仏壇に手を合わしていた、竜二。
くるりと振り返って、

竜二「で、何なんだ? その、電子マネーってのは」

二人の間には、電子マネー。

亜希子「今の世の中、これがないと買い物も満足に出来ないの」
竜二「これが、金の代わりだって?」
亜希子「うん、そうよ」


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竜二「……じゃ、今日からはこれをスルのか」
亜希子「そうね。そういうことになるわね」

竜二、なんだか複雑な表情。
だが、それを振り切るように、

竜二「よし、こっちは俺の。そっちは亜希子のにしよう」
亜希子「うん」
竜二「(手に持って)軽いんだな……」
亜希子「(もうひとつを持って)うん、軽いよね。でも軽いからスラれたことに誰も気づかない」
竜二「なるほど……。アシはつかないのかな?」
亜希子「電子マネーはクレジットカードと違うの。サインをしたり、承認したりする必要もないのよ。だから、落としたりスラれたりしたら、誰でも自分の金として使えるの」
竜二「ほう……」
亜希子「ねっ、いいでしょう? まるでスリのためにあるようなお金でしょ?」
竜二「そうかもな」


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亜希子「ねえ、そっちにはいくら入ってる?」
竜二「さあ?」
亜希子「電源を入れてみて」
竜二「電源?」
亜希子「そこのボタン」
竜二「(見て、押す)」

数字の表示が出る。「35204」

亜希子「(覗いて)3万5千204円あるわ……」
竜二「結構入ってたな」
亜希子「こっちは2万8千511円」

その時、玄関の方で音が聞こえる。
「ごめんください」という声。

竜二「誰か来たぞ」
亜希子「うん(と立ち上がる)」

亜希子、なぜか照れた様子。

竜二「?」

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