| 陽子 | やっほーっ。 |
| 佐知子 | (うろたえつつ)お、お帰りなさい、陽子ちゃん。予定より早く退院できて良かった |
| じゃないのー。 | |
| 陽子 | うん。……アレ? クローンは?(と、キョロキョロ) |
| 佐知子 | な、何言ってんのよ、陽子ちゃん。本物が帰って来るんだもん、テストが終わったら |
| たっぶりお礼を払って外国に行ってもらったわ。 | |
| 陽子 | そっかー、良かった。帰って来たら、自分のコピーと一緒に暮らすのかと思って心配 |
| しちゃった。 | |
| 佐知子 | ま、まさか。そうはいかないわよ。 |
| 陽子 | だよね。(荷物を置いて)あたし、ちょっと出掛けてくるね。 |
| 佐知子 | そう。じゃ、いってらっしゃい。すぐに。 |
| 陽子 | いってきまーす(と、出ていく) |
| 佐知子 | (ホッとする) |
| 陽子 | ひどいじゃない、ママ……。 |
| 佐知子 | (慌てて)ごめんね、クロちゃん。だって急だったから。 |
| 陽子 | あんなに一生懸命勉強して、あたし推薦入学まで決めたのよ。 |
| 佐知子 | ホントよ。クロちゃんホント良く頑張ったわね。 |
| 陽子 | で……大学に通うのは、本物なの? |
| 佐知子 | え? ……あイヤ、それはその…… |
| 陽子 | 言っておくけど、あの子じゃ入学しても授業にはついていけないわよ。 |
| 佐知子 | ……そう言われてみれば、そうね。 |
| 武 | クロ子ちゃん、早く早く(と手を引っ張り、ベッドヘ) |
| 陽子 | 行く? また行くの、ベッド? |
| 武 | ちがうって。本物が退院して来たんだ(と、布団をかぶせる) |
| 陽子 | えーっ、もう? |
| 陽子 | やっほーっ。 |
| 武 | (うろたえつつ)や、やあ。久しぶりー。 |
| 陽子 | (キョロキョロして)クローンは? |
| 武 | なっ、なーに言ってんのよ、陽子ちゃん。君が帰って来るんだもん、お礼をたっぶり |
| 払って、外国に行ってもらったさ。 | |
| 陽子 | そっかー。良かった。自分のコピーと武くん取り合うのかと思って心配しちゃった。 |
| 武 | まさか。そんなことありえないよ。 |
| 陽子 | だよね。あーあ、お腹すいたな。 |
| 武 | 行く? おいしい店見つけたんだけど。……行く? |
| 陽子 | うん、行く。 |
| 武 | 俺すぐ着替えるよ。外で待ってて。ねっ。 |
| 陽子 | え? 外で? |
| 陽子 | ひどいわ……武くん。 |
| 武 | (急いで帰って来て)ごめんよ、クロ子ちゃん。 |
| 陽子 | あたしと、婚約したんじゃなかったの? |
| 武 | したよ。クロ子ちゃんと婚約した。 |
| 陽子 | で……結婚するのは、本物? |
| 武 | えっ? ……あイヤ、それはその…… |
| 陽子 | 言っておくけど、あの子料理ひとつできないわよ。 |
| 武 | ……そう言われてみれば、そうだね。 |
| 患者 | (ぼーっと見とれて)……あ、あのう。 |
| 陽子 | ……はい。 |
| 患者 | ボク、退院まであと一ヵ月半って……ホントですか? |
| 陽子 | ええ。うれしいでしょう。 |
| 患者 | ハイ。……やっぱ違うのかなあ。キレイな人にみてもらうと回復も早くて…… |
| 医者の声 | (ドアの向こうから)困っちゃうだろ? |