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バタン。洋服ダンスの扉を閉める佐知子。
と、ほぼ同時に部屋に本物の陽子が入ってくる。ガチャッ。
陽子やっほーっ。
佐知子(うろたえつつ)お、お帰りなさい、陽子ちゃん。予定より早く退院できて良かった
じゃないのー。
陽子うん。……アレ? クローンは?(と、キョロキョロ)
佐知子な、何言ってんのよ、陽子ちゃん。本物が帰って来るんだもん、テストが終わったら
たっぶりお礼を払って外国に行ってもらったわ。
陽子そっかー、良かった。帰って来たら、自分のコピーと一緒に暮らすのかと思って心配
しちゃった。
佐知子ま、まさか。そうはいかないわよ。
陽子だよね。(荷物を置いて)あたし、ちょっと出掛けてくるね。
佐知子そう。じゃ、いってらっしゃい。すぐに。
陽子いってきまーす(と、出ていく)
佐知子(ホッとする)
と、洋服ダンスから出てくる、クローンの陽子。
陽子ひどいじゃない、ママ……。


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佐知子(慌てて)ごめんね、クロちゃん。だって急だったから。
陽子あんなに一生懸命勉強して、あたし推薦入学まで決めたのよ。
佐知子ホントよ。クロちゃんホント良く頑張ったわね。
陽子で……大学に通うのは、本物なの?
佐知子え? ……あイヤ、それはその……
陽子言っておくけど、あの子じゃ入学しても授業にはついていけないわよ。
佐知子……そう言われてみれば、そうね。

●武の部屋

 
料理を作っている、陽子。
武、慌ててキッチンに駆け込み、キッチンヘ。
クロ子ちゃん、早く早く(と手を引っ張り、ベッドヘ)
陽子行く? また行くの、ベッド?
ちがうって。本物が退院して来たんだ(と、布団をかぶせる)
陽子えーっ、もう?
ガチャッ。陽子を隠すとほぼ同時に、本物の陽子が部屋に入ってくる。


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陽子やっほーっ。
(うろたえつつ)や、やあ。久しぶりー。
陽子(キョロキョロして)クローンは?
なっ、なーに言ってんのよ、陽子ちゃん。君が帰って来るんだもん、お礼をたっぶり
払って、外国に行ってもらったさ。
陽子そっかー。良かった。自分のコピーと武くん取り合うのかと思って心配しちゃった。
まさか。そんなことありえないよ。
陽子だよね。あーあ、お腹すいたな。
行く? おいしい店見つけたんだけど。……行く?
陽子うん、行く。
俺すぐ着替えるよ。外で待ってて。ねっ。
陽子え? 外で?
武、陽子をぐいぐい押し、玄関へ。
ガチャッ、バタン。
と、同時にベッドから出てくる、陽子のクローン。
陽子ひどいわ……武くん。
(急いで帰って来て)ごめんよ、クロ子ちゃん。


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陽子あたしと、婚約したんじゃなかったの?
したよ。クロ子ちゃんと婚約した。
陽子で……結婚するのは、本物?
えっ? ……あイヤ、それはその……
陽子言っておくけど、あの子料理ひとつできないわよ。
……そう言われてみれば、そうだね。

●病院・病室

 
看護婦の陽子、意識が戻った患者の包帯を、取り替えている。
太陽の光を浴びた陽子の顔は、まるで天使のように見えて……
患者(ぼーっと見とれて)……あ、あのう。
陽子……はい。
患者ボク、退院まであと一ヵ月半って……ホントですか?
陽子ええ。うれしいでしょう。
患者ハイ。……やっぱ違うのかなあ。キレイな人にみてもらうと回復も早くて……
医者の声(ドアの向こうから)困っちゃうだろ?


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