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ガチャッ、バターン。
ドアの音がして、部屋にはオレンジだけが残された。
オレンジ(ニコニコ)……。

●公園

 
いつもの公園のいつものベンチに、ワタルが一人座っている。
モノローグで、
「あれ以来、僕たちはときどき外で遠っていた」
 
背後から手が伸びて、ワタルの目をふさぐ。
ワタル……?
黒木だーれだ。
黒木の手だということは、すぐにわかった。
ワタルの胸はドキドキしていた。
突然、目かくしの手がパッと離れた。
ちゅっ……。黒木が、ワタルの頼に口づけをした。
ワタルあ……(と頬を手で抑える)


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肩をすぼめて笑い、黒木は隣に腰掛ける。ワタルに寄り添うように。
黒木ねえ。これからウチに来ない?何かごちそうするけど。
ワタルホ、ホント?
黒木何食べたい?
ワタルな……何でもいいよ。
しばらくして、ワタルは思い出したように付け加える。
ワタルあ…オムレツ以外。

●ワタルの部屋・キッチン

 
その頃部屋では、エプロン姿のオレンジがオムレツを作っていた。
楽しそうに鼻唄を歌うオレンジの顔に、
黒木の声(先行して)えっ?処分方法?

●公園

 
ベンチから歩きだした、ワタルと黒木。


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ワタル(暗い表情で)うん……
黒木やだ、説明書読んでないの?背中のスイッチをオフにして清掃局に連絡する。
……それだけよ。
ワタル清掃局?
黒木アンドロイドの回収は清掃局の仕事なの。電話一本で来てくれるわ。
ワタル(立ち止まって)それじゃまるで粗大ゴミじゃないか!!
黒木そうよ。(立ち止まり、クールに)不要になった機械は、全部粗大ゴミよ。
ワタルそ、そんな……。
ゆっくり歩きだす、黒木。ワタルは立ち止まったまま。
黒木これも脱明書に書いてあることだけど。電源を切れば、アンドロイドの記憶はす
べてリセットされるのよ。あなたの顔も名前も全部消去されて、何もかも忘れて
元のろう人形に戻るの。少しは楽な気持ちになれるでしょ?
ワタル僕には……やっぱり(首を横に振って)出来ない。
黒木(立ち止まり、振り返る)どうして?
ワタル拾てる側の記憶---僕の記憶は、誰にも消去できないじゃないか。
黒木え?
ワタル……。


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黒木そうね。人間の背中には……スイッチがないからね。
黒木、ゆっくり歩きだす。
その場から動かぬワタルの後ろ姿その背中が画面に強調される。

●ワタルの部屋(翌日)

きれいな半円形をした、オムレツ。
オレンジが、それを口に運ぶワタルを、幸せな顔で見つめている。
「だが翌日、僕はついに決心を固めた」
オムレツを食べ終わり、静かにフォークを置くワタル。
ゆっくり立ち上がり、目を閉じる。
ワタル……。
オレンジ(キョトンとして)?

●森の中

深い霧が立ち込める森の中。遠くに人影が見える。


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