Top
<<>>
123456・7・89


オレンジワタル(ともう一度呼ぶ)
が、立ち止まらない。
オレンジ好きよ(と、ニコニコ)
そのニコニコ顔から、ワタルの背中がどんどん遠くなる、
「僕はもう、飽き飽きしていた。何度耳を傾けても変わらない彼女の声にも、調味料の加
減までいつも完竈なオムレツの味にも……」

●アンドロイドを売る店(夜)

 
エレベーターの扉が開き、ワタルが現れる。
最初に店に来た時と同じ、黒のワンピースを着た、黒木。
ワタルあの、すいません。別売りのヤツを……。
黒木ロムカードのご購入ですか?
ワタルはい。
黒木どうぞお座りください。ご利用いただいているアンドロイドは確か……。
ワタルオレンジです。
黒木そうでしたね(と、コンピューターに向かう)


25


 
黒木の表情が、突然曇る。
黒木あの、お客様。こちらは『エンポリオシリーズ』というだいぶ前の商品でして。
ワタルええ。
黒木つい先日、ロムカードの生産を終了せていただきました。
ワタルというと?
黒木現在ご利用の会話を、これ以上増やすことは出来ないんです。
ワタルそんな……。
黒木申し訳ございません。(と頭を下げる)

●ワタルの部屋(夜)

 
ソファでテレビ。オレンジは今日もニコニコ顔。
ワタルの顔は疲れ切っている。も、目だけは画面を見続けている。
カメラがゆっくりとまわり込むと、その画面が見えてくる……。
---それは、砂嵐。そしてザーッというノイズ音。
いつまでも砂嵐を見統ける二人……。


26


●ラーメン屋(数日後)

 
ラーメン屋の主人が、暇そうにスポーツ新聞を読んでいる。
カラカラッと扉の音がして、
主人(顔をあげ)いらっしゃい。
店員(奥から出てきて)らっしゃーい。
店に入ってきたのは、ワタル一人。
主人あれ?今日は一人?
ワタル……ええ。
店員(水を出し)何にいたしましょう。
ワタルえーっとね……(壁のメニューを見る)
とその時、カウンターに座った客と、目が合う。
ワタル……あ。
それはなんと、黒木だった。
黒木どうも(と微笑む)
ワタルど……どうも。
ラーメンをすする黒木は、店とはまるで違う印象だ……。


27


 
洋服だ。ワンピースは、明るい色で、しかも柄物だった。
ワタル……。

●ワタルの部屋(一ヵ月後)

 
鏡に映ったワタルの顔。そして、モノローグ。
「それから、一ヵ月が過ぎた」
 
ワタル、ジャケットを羽織り、ボタンを掛ける。
突然、肩ごしに現れるオレンジの顔。
ワタル(ドキッ)
オレンジねえねえ、どこ行くの?
ワタルちょっと、ね。
逃げるように部屋の鍵を取りに行く、ワタル。
オレンジ最近出掛けてばっか。今日も遅い?
ワタルま、まあね……
足早に部屋を出ていく、ワタル。
オレンジ……いってらっしゃい


28


<<>>
123456・7・89