7月15日(火)
「撮休」(さつきゅう)
なんと甘美な響きでしょう。
毎日毎日、朝はやーくから夜おそーくまで真剣勝負の撮影が続く中で、この言葉を聞こうものなら、もう、タマリマセンです。ほんとうにルースになって、深い眠りの世界へ行きたい。
でもスタッフは、打ち合わせに準備にと駆けずり回って、お休みどころではないのです。
明日からもまた、がんばろうっと。
ここで撮影日誌をやっていると、いろんな方々から「見てるよ」なんて声をかけていただいたり、メールをいただいたりして、嬉しいような照れくさいような気持ちになります。その中から、下さった方のご許諾を得まして、ひとつご紹介いたします。
特別エッセイ
雨のプール
佐伯一麦
先日、ひさしぶりに母校である高校を訪ねる機会があった。
着いて、私が真っ先に向かったのは、在学中に所属していた水泳部の部室で
ある。体育館の隅に、大きな碁盤縞の下駄箱でバスケット部と仕切られてある
そこは、相変わらず汗臭さと湿っぽいにおいに包まれていた。
昼から、拙著『ア・ルース・ボーイ』が原作の映画の撮影が行われた。設定
は、高校を辞めて電気工となった主人公が、卒業式を控えた母校の体育館の天
井の水銀灯を交換している際に、真下に自分たちの卒業式をまぼろしに見ると
いうものだ。
そのまぼろしの卒業式のために、在校生や先生方が二〇〇人ほど集まってく
れ、かつての同級生たちも教師役や来賓役などのエキストラをつとめてくれ
た。
長髪や茶髪など、恰好がすっかり現代風になっていても、男子校特有のむん
むんとした男臭い人いきれは変わりがなかった。
ヒロイン役の小嶺麗奈さんの「応援団にエールを送ってもらって感激しまし
た」という挨拶に、オウーと野太い歓声が上がった。
撮影途中の休憩時に、再び部室から人気のないプールへと向かってみた。そ
ぼ降る雨が、水面に落ちている。
高校生の頃も、授業をさぼって、よくこうして一人でプールにいた。今は取
り払われてしまったが、体を温めるためにドラム缶で作った五右衛門風呂を炊
いたり、プールサイドの芝生に毛布を敷いて本を読んだり。
かすかに波打っているプールの水面を見ながら、こんな雨の日は、水の中に
つかっていた方が暖かかった、と思った。
なんと、原作者の方まで見てくださってたんですねぇ。このメールが来たときは、びっくりして飛び上がりました。皆様のご声援にはホントに感謝感謝です。ありがとうございます。今後もよろしくお願いします。
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