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7月2日

本日7月2日は記念すべき「ア・ルース・ボーイ」のクランクインであると共に、細野監督初の「ヨーイ、ハイッ」という本番の声が響いた日でもありました。当初のスケジュールを、チーフ助監督の機転(読み通り、途中雨が降ってきた)で、ロケセットの撮影と変更なりましたが、無事予定通り終了しました。

幹の赤ちゃん・梢子役のたくま君はとてもおとなしい子で、現場を一回も困らせることなどありませんでした。赤ちゃんの撮影は、大勢の人間と照明の光で泣き出す子ばかりで、現場もある程度覚悟はしていたのですが、本当に泣かなかったイイ子でした。撮影が終わって、帰りのバスの中で、母親役の小嶺麗奈ちゃんは、「たくちゃんに会いたい会いたいと」言っていて寂しそうな顔をしていました。


7月3日

7月3日(木)晴天(というより暑すぎるっ)
麗奈ちゃんがバイクに乗るシーンで私は運転手の人にくれぐれも事故の無いようにと(何かあったらコロスと言っていた)、冷や冷やモンだったのに、肝心の麗奈ちゃんは余裕の乗り方。それどこらか、バイクの速さに、カメラがついていけてないと思っていたら(1)、乗りだしポーズまでしてくれた(2)。そして抜群のショットが撮れたことに思わずvサインを出したら、彼女はにっこりと笑顔で答えてくれる。始めの緊張感は、何だったんだっけ?
この日も撮影快調


7月4日

7月4日(金)曇りのちとっても晴れ(本当に暑すぎる)
今日は、原作の始めに描かれている喫茶店クー(coo)本物におじゃまして撮影をさせていただきました。この喫茶店の中で原作を読むと、鮮達が本当に生活していた時代にいるような気にさせられました。ご主人もすごくステキな方で、通いつめるのもうなづけます。こじんまりとした店内に心地よいジャズが流れて、外の雑踏をしばし忘れさせてくれる所です。
今日は雲に悩まされました。撮影は1カット撮るのにカメラのセッティング、照明の調整、マイク位置等、時間がかかります。だから、そのシーン一番手に撮ったカットが{太陽が雲の中に入った状態}の時に撮影をすれば、そのシーンは全部{太陽が雲の中に入った状態}で撮影しなければならないのです。それなのに、太陽の奴は、雲から出たり入ったりとなかなか定まってくれません。皆空を見上げ、雲の流れる速さを予測しながら、スタンバイしていました。しかし、結局自然を読み切る事は出来ず、ファーストカット、リテイクを行う事になってしまいました。
雨よりましか、と思うものの曇りもやっかい。撮影的には、晴れがグットなのですが、私は日に焼けて腕がヒリヒリし、晴れムカツクって感じでした。


7月5日

7月5日(土)晴れのちときどき雨(通り雨)
助監督・佐々木さんの頭脳プレーで本日は再会しました。電信柱からの線が白く、カメラマンより「黒くしてくれ」との指示が出ました。画面の中に、白い線となってキズに見えるからです。「真ん中から下が黒かったらいいよ」というのに佐々木さんは電信柱の上までに登りつめました。そこから黒いテープをたらし、下で受け取った人が、電線にはわせると、ぴたっくっつき一気に電線は黒くなりました。いやぁお見事。

そして、今日は「ア・ルース・ボーイ」の作品の中で私が最も好きな場面が撮影されて、テストのたびにクラクラしていた。クラクラというのは、岡田君の芝居が超すてきで、「どうぞ」というセリフにしびれてクラクラ。「きゃー私にも言って・」って感じです。キャスティングに間違いはなかった。と、改めて思いました。現場の人間が言うのもなんですけど、ほんと、岡田君かっこいいんです。実は、今ロケ現場のメイク室でこのレポートを書いているのですが、隣りで岡田君がくつろいで次のシーンを待っています・私、こうしててもちゃんと仕事をしてます。


7月6日

7月6日(日)大雨のち晴れ
 恐れていた雨がとうとうやってきた。今日は一日もりたくさんのスケジュールだったのですが、午前の予定は全て中止。ちょっとづつこぼれてきました。(こぼれると言うのは、撮り残す。撮りきれなかったと言う意味)昨日は実景。その分、ラストシーン鮮の空想の卒業式の場面を準備を含めてじっくり撮影することが出来ました。
 本日卒業生の協力に仙台一高の生徒の皆さんが出演していただき有り難うございました。(じゃんけんをして次のシーンに残る人を選んでいたSTAFFが私です)そのお礼にテレホンカード200枚にきちんとサインしてくれた(ズルはしていません)岡田君と麗奈ちゃんも本当に有り難うございました。また、スタッフキャスト一丸となって卒業式の舞台を作りました。
 そして、原作者の佐伯一麦さんが現場を見学して下さり、暑く長い撮影に来賓客として参加もしていただき本当の感謝しております。雨で中止になったのは残念でしたけど、こうした皆さんの協力で本当イイ場面になったと思います。余談・たくさんの若い男子高校生が見れて、私はちょっと嬉しかったです。


7月7日

7月7日(月)晴れ
今日は、何事もなく順調に撮影は終了した。
そして沢田役のKONTAさんは大活躍であった。沢田家の中で子供とじゃれあっているという場面。KONTAさんは、現場待機の時間から、子役とずっと遊んでいた。もちろん親子という役作りの為でもあったと思うのですが、本番でのじゃれあいかたを子供が楽しく遊べるように考えつつカメラアングルも考えつつ決めて頂き、子供の意識を持続させる努力も惜しみなくずーっとして頂いてた。(途中、子供達はKONTAさんと遊ぶのに飽きてきてしまい、お母さんの所に帰りたがっているのを何とか引き留め、あらゆる手でその場を楽しませようとして下さっていた)本番間際では、そういったことが良い方向に向き、KONTAさんと子役達は本当の親子のように見えました。


7月8日

7月8日(火)晴れ
ラブホテル内での撮影がやってきた。ロケーションでホテルの1フロア全部を借りきったため私たちは色々な部屋を見て回ることになった。特に麗奈ちゃんは入ったことがないらしく(お金を払って、Hをするという行為が考えられないらしい)うきうきしながら探索しておりました。妖しい色の照明やら、大人の○○から、中でも強烈なのが、伝言ノート。不倫中の彼と来ているだの、体位はどうだの、回数はどうだの節操がないったりゃありゃしない。
世の中どうなってるの(特に伝言ノートを書いている女達ッ)信じられなーいといいつつ、かなり楽しませて頂きました。


7月9日

7月9日(水)とうとう雨に悩まされる
つゆ時期であるということをクランクインする前からある程度覚悟はしていた。しかし諸々の事情から7月にインしなければならないという制約もあり、晴れを祈り強行で進めて来た現場。がこの日の天気は最悪であった。やっかいであったのは、雨なら雨でしゃきっと降るという状況にならなかったこと。現場に向かってから降り出す雨。移動中は曇り、別の現場に着くとまた雨が降る。現場の判断をことごとく裏切る天気であった。スタッフ全員が空を仰ぎ見続けた日であった。


7月10日

7月10日(木)
役者とは大変な職業である。
役者サンが役に入る方法は、人それぞれ全くタイプが違う。岡田君はリハーサル(クランクイン前)からほぼ毎日ずーっとどこでもなんどきでも悩んでいる。(控え室、バスの中、食事中も、トイレでもじゃないかな)悩んで考えて考え続けないとダメらしい。麗奈ちゃんは、その日その時間その場面で瞬間一気にものすごい集中力で気を高め役に入っていく。逆に言えば、撮影する直前まではキャピキャピなギャルである。三上君は役作りは素のままで、セリフの言い回し(地元の訛りが抜けない)を重点的にずっと練習している。最大の難関は「しょぼしょぼ歩いてんじゃねーよ」と、2シーンに渡って大山役のキャラクターが出るセリフであった。KONTAさん、螢サンは、控えの最中はずっと練習をしている。相手がいなくても、一人で間とか、雰囲気とかを考えながらぶつぶつぶつぶつずっと続けている。といった具合である。
そこでやっぱり大変だなと特に思ったのが岡田君である。彼は主役であるため、この全く違うタイプの役者と一つの場面を作らなければならない。普段の麗奈ちゃんと、幹とのギャップ。撮影前日、夜通し「しょぼしょぼ」言っている三上君に言い回しチェックをする。(三上君と岡田君は同じ部屋)KONTAさんとは、テストの最中からついでくれるビールを芝居に合わせて飲み干す。(KONTAさんは、段取り、テスト、本番とテンションは殆ど変わらない)そして岡田君はビールが苦手だったということである。


7月11日

7月11日(金)
動物の撮影とはというものは本当にやっかいである。
電車の中での撮影とは、他のお客さんが乗車されていることもありやっかいである。(挿入写真はカメラマンの鈴木達夫氏が撮影したものである)
その二つが重なった今日の撮影、本当に大変であった。猫がウミニャウミニャっと(かわいく)のっそりバスケットから顔を出したかと思うと、ミュギャーァァァと一目散に飛び出す。(うまく文字で表現できないのが残念だ)その繰り返し。ウミニャウミニャ、ミュギャーァァァ、ウミニャウミニャ、ミュギャーァァァ、ウミニャウミニャ、ミュギャーァァァ、ウミニャウミニャ、ミュギャーァァァ、ウミニャウミニャ、ミュギャーァァァ、ウミニャウミニャ、ミュギャーァァァ、どれほど活字を並べればどれだけ大変だったか伝わるのだろうか。
そのため、本日シーン撮影どころではありませんでした。


7月12日

7月12日(土)
今日は一日とても長い日であった。予定表を見ていただければ、ご理解してもらえると思うのですが、早朝ロケに現場移動の多さ。撮影終了後にはほんとドッと疲れた。中でも厳しい現場だったのが、商店街の中を、岡田君と麗奈ちゃんが歩くという場面。土曜日ということとバーゲンセール中が重なっていつもより倍の人の多さの所を、芸能人が歩くのである。普通にしていればバレないものかと思っていたが甘かった。やっぱりどうしたって目立ってしまうのである。私は麗奈ちゃんのボディガード担当で、ケビンコスナーと化していた。そこでプロフェッショナルな待機中にしていたことといえば、プリクラ。「遊んでいるだけじゃない」と思われるかも知れないが、以外と一番バレない方法で(画面に向かって隠れているため)、安全だったのです。でも私としては、麗奈ちゃんとプリクラできて、ちょっと嬉しかったです。


7月13日

7月13日(日)
先週の卒業式のシーンで集まってくれた仙台一高の皆さんが、私とのジャンケン大会に勝ち残り、本日の教室での場面・鮮のクラスメイトとして再び参加していただきました。セリフ一言だけある役を争奪し、ブラックに頭をたたかれる役も争奪し、岡田君の近くの席を争奪し、かなりのバトルが繰り広げられた教室での撮影。貴重な休みの中、本当に有り難うございました。
参加していただいて言うのもなんですが、一七・八のイイ男達が何の予定(デート)もなかったのかしら?そんなことでいいのかい?何も考えることなくバカやってられるのは本当に高校生の頃だけ。映画の主人公と同じように、無茶やって、精一杯生きて(青春)して欲しいものです。


7月14日

7月14日(月)曇り
今日は鮮と大山二人の芝居場(s#99鮮が学校を辞めた事を責める大山・s#119幹がでていった後、鮮と大山が和解する)だった。大山役の三上君は昨夜のリハーサルからずっと考え込んだまま朝を迎えた。バスの中でも、ロケ先の控え室でもずっと台本を睨んでいる。監督が「大丈夫?」と聞く。「あぁうん」彼の返事はどこか上の空。少しの不安が頭をよぎった。リハーサルでも今一つ乗り切れてなかったっけ?ずっとずっとここの大山の気持ち悩んでたっけ?大丈夫だろうか・・・?
「何で大学行ける奴がそんな格好して働いてんだよっ何でだよ」
はいっオッケイ。私たちの心配はどこへやら、期待以上の芝居を見せてくれた。 「他の野郎のガキ育てて面白いかよ」
「・・・(何も言い返せない鮮)」
あぁ、最高。二人ともシビレるぅ。芝居とは不思議な物で、相手のテンションがお互いを刺激しあってよりハイテンションになっていった。(今すぐ映像をお見せできないのがとても残念だ)岡田君も手応えを感じたようで東京にいるマネージャーに連絡していた。三上イイかった。イイ場面になるよ。
ええそうですともそうですとも、学ラン姿も最高にいいの。かわいいっ。って最後は個人的な趣味の感動になってしまい、写真もその場面を紹介させて頂きました。すみません。


7月15日

7月15日(火)
「撮休」(さつきゅう)
なんと甘美な響きでしょう。
毎日毎日、朝はやーくから夜おそーくまで真剣勝負の撮影が続く中で、この言葉を聞こうものなら、もう、タマリマセンです。ほんとうにルースになって、深い眠りの世界へ行きたい。
でもスタッフは、打ち合わせに準備にと駆けずり回って、お休みどころではないのです。
明日からもまた、がんばろうっと。

ここで撮影日誌をやっていると、いろんな方々から「見てるよ」なんて声をかけていただいたり、メールをいただいたりして、嬉しいような照れくさいような気持ちになります。その中から、下さった方のご許諾を得まして、ひとつご紹介いたします。


特別エッセイ

雨のプール
                         佐伯一麦

 先日、ひさしぶりに母校である高校を訪ねる機会があった。
 着いて、私が真っ先に向かったのは、在学中に所属していた水泳部の部室で ある。体育館の隅に、大きな碁盤縞の下駄箱でバスケット部と仕切られてある そこは、相変わらず汗臭さと湿っぽいにおいに包まれていた。
 昼から、拙著『ア・ルース・ボーイ』が原作の映画の撮影が行われた。設定 は、高校を辞めて電気工となった主人公が、卒業式を控えた母校の体育館の天 井の水銀灯を交換している際に、真下に自分たちの卒業式をまぼろしに見ると いうものだ。
 そのまぼろしの卒業式のために、在校生や先生方が二〇〇人ほど集まってく れ、かつての同級生たちも教師役や来賓役などのエキストラをつとめてくれ た。
 長髪や茶髪など、恰好がすっかり現代風になっていても、男子校特有のむん むんとした男臭い人いきれは変わりがなかった。
 ヒロイン役の小嶺麗奈さんの「応援団にエールを送ってもらって感激しまし た」という挨拶に、オウーと野太い歓声が上がった。
 撮影途中の休憩時に、再び部室から人気のないプールへと向かってみた。そ ぼ降る雨が、水面に落ちている。
 高校生の頃も、授業をさぼって、よくこうして一人でプールにいた。今は取 り払われてしまったが、体を温めるためにドラム缶で作った五右衛門風呂を炊 いたり、プールサイドの芝生に毛布を敷いて本を読んだり。
 かすかに波打っているプールの水面を見ながら、こんな雨の日は、水の中に つかっていた方が暖かかった、と思った。


なんと、原作者の方まで見てくださってたんですねぇ。このメールが来たときは、びっくりして飛び上がりました。皆様のご声援にはホントに感謝感謝です。ありがとうございます。今後もよろしくお願いします。


7月16日

7月16日(水)
晴れ予定と雨予定両天出たこの日、チーフの予感的中、雨だった。
KONTAさんはさすが○児のパパである。赤ちゃんのお風呂の入れ方も慣れたもんで、岡田君麗奈ちゃんに指導していただいた。紹介している写真でも赤ちゃんはご機嫌さんである。あったはずなのに・・・本番のかけ声と共に、大音響。アーンアーンアーンウアーンアーンアーンアーン泣いて泣いて泣いて泣き止まないのだ。おかあさーん、赤ちゃんが赤ちゃんが泣いて泣いて泣いて・・・(どうしてしまったんですかっと怒りの声といっても怒ってもしょうがないのにあー撮影出来ないじゃぁないという叫びを押し殺して)どうしちゃったんでしょう、お眠りの時間でしょうか?ミルクの時間でしょうか?おかあさん、どうにかして泣き止ませてくださぁい。「あらあら、どうしちゃったんでしょうかねぇ」あぁぁおかあさーんどうしちゃったのかはこっちが聞きたいですぅ。何日か前の猫の撮影も大変だったが、赤ちゃんの撮影もとても大変である。でもこの赤ちゃん、後日とんでもなくすばらしい芝居を見せてくれた。助演女優賞は赤ちゃんに捧げたい。


7月17日

7月17日(木)
幼い鮮役のやっちゃん(渡辺靖史くん)はとてもかわいい。シャイな性格?からかただ単におとなしい性格か、人見知りしているのか、殆ど何も話さないというより、話しかけてもしゃべってくれない。しかし、監督の説明を聞きうんと頷いてしっかりと演技する。どこまでシーンの意味を理解しているかはわからないが、スクリーンに写った芝居は実に感動させられる。「やっちゃん、今のよかったよ」といっても彼は何も言ってくれない。返事もしてくれない。やっちゃんからすればうるさいお姉さんだったのかもしれないが、やっぱり寂しい気分にさせられた。やっちゃーん・・・


7月18日

7月18日(金)晴れ
16日晴れ予定だった分の撮影がこの日やっと行われた。トータルスケジュールからめっちゃくっちゃに進んだり遅れたり入れ替わったりしている為、撮影順調なのか不調なのか把握出来なくなってきた。チーフに言わせると大丈夫でしょう・・・その{・・・}はなんだぁ。大丈夫っ大丈夫ですよ・・・とやっぱり{・・・}は何を意味するのか。欠番シーンも出てきた。(欠番とは台本からそのシーンを抹消すること)これは監督が最終的にジャッジして決定するのだが、欠番にする理由は様々なものがある。もともとストーリーの中で必要と感じられないもの、ロケーション場所の関係でうまく撮影出来ないと判断するもの、スケジュールがはまらない等である。
現在で欠番が決まったのは、s#10・18・27・37・39A・94である。中には、私が構成したシーンも含まれていたため、監督に理由を求めた。ふむふむふむ、聞けばもっともらしい理由を聞かされるのだが、何ともやるせない気持ちになるのはこんな時だ。私はこの作品を作る人であって、造る人ではないのだと改めて思わされる。いつか造る人になってやる、密かな野望が生まれるのもこんな時だ。


7月19日

7月19日(土)晴れ
マシーントラブルの原因を読んでおられる方はご存じのはずですが、私はちょっといろいろと忙しい人間であり、東京と仙台の往復を繰り返しているのだが、仙台に来るときはいつも必ずといっていいほど、早朝ロケが入る。朝3時15分出発。思わず言ってしまった「チーフ、これは私に対するいじめでしょうか・・・」東京を出たのが20時ごろ仙台に着いたのが22時、旅館に着いたのが23時頃、マシーンにデータを打ち込んでいたら、画面が消える、反応しない、目が点になったのが、忘れもしない25時14分。出発が27時15分。睡眠1時間45分。でも全然私は元気だった。現場が好きだもの、だって岡田君に会えるんだもの。ロケバスに乗り込むと、「あ、大山さんだ。おはようございます」この岡田君の声を聞いただけで私はハイになってしまう。単純な奴だと自分でも呆れるのだが、呆れる以前にこの日私はとんでもない失態をさらすことになる。
 「ハッピィバースディトゥユーハッピィバースディトゥユーハッピィバースディディア麗奈ちゃんKONTAさーんハッピィバースディトゥユー」パチパチパチパチ(大拍手の音)今日は麗奈ちゃんの誕生日と、KONTAさんの近く来る誕生日を祝ってささやかなパーティが開かれた。大広間にケーキと旅館の旦那さんが作ってくれた豪勢な料理を囲んで、パーティというより宴会だった。飲めや騒げや・・・KONTAさんがギターで演奏してくださり(KONTAさんの生歌が聞けたのは超ラッキー)歌うわ踊るわ、若いチームと年輩チームに分かれてそれぞれ楽しんでいた。私は、若いチームと年輩チームの両方を行ったり来たりしながら、飲み始めた酒が「浦霞」あの銘酒である。これはまずかった、いやお酒は大変おいしく頂いたのですが、ひじょーにまずかった。睡眠不足の上に、ずいぶんとご無沙汰していた日本酒。酔いが一気に私を狂わせる。
 「大山さーん、この音楽好きだから一緒に聴いてよ」とは誰が言ったか?「わかった聞く聞く」と岡田君の部屋(CDを聞けるのは彼の部屋だけ)へ行ったまでは覚えている。その後数時間気を失っていた。気が付いたときには岡田君が困った顔(怒った顔だったかも)をしている。隣では監督が気を失っている。あぁ、主演男優に気を使わせることをするなんてなんてことをぉぉぉぉ、「すみませんすみませんすみません」(岡田君のファンの方ごめんなさい)この日から、岡田君の私に対する意地悪冷たい仕打ちが始まった。あぁぁ・・・


7月20日

7月20日(日)晴れ
撮影現場には突如としていろいろな問題が起こる。悪天候だとか、渋滞だとか、動物が言うことをきかないとか、アイスクリームがとけるとか、用意していたものが無くなるとか・・・そして、時には問題と言う表現が適切でない問題もあって、今日はその表現が適切でない方の問題が勃発した。撮影監督の画造りへのこだわりは全場面、全カットに存在しているのは当然だが、ラストシーンの画ともなると、よりいっそう力が入るものである。「あのアレがじゃまだなぁ・・・」「え?」「・・・ほら、アレがないほうが道がまっすぐずっと続いてイイんだよ。・・・」「え?アレってアレを移動させろっていうんですかい?・・・え?・・・だってアレですよ」「・・・そうアレじゃまだから頼むわ」「・・・いやぁそりゃおっしゃられれば、たとえ火の中水の中ですが・・・わかりました、やりましょうよ、動かして見せましょうよ」そうならいっそ警察に連絡してみるか、それはよくない痛くもないハラ(現場使用許諾等)を探られるのはごめんだから。では持ち主をご近所一軒一軒あたってみるか、それはもう既に制作部が全てたずねてみたのですがホシはいない・・・さあどうするべ・・・スタッフの知恵が絞られた。
そして2時間後とうとうアレはずるずると移動され、道はまっすぐに延びた。何の事はない画にも細かいこだわりとスタッフの努力で作り上げられているいうことを、気にして作品を見てほしいと願うものであります。


7月21日

7月21日(月)
以前、欠番がつくられる過程の話をしましたが、逆に脚本にない場面が追加される事もあります。欠番にしてしまったためのつながりの関係や、流れ的にクッション的な場面が必要な時がそうである。脚本では時間経過を無視して言うべき事、伝えなくてはならないことだけで構成している場面があるのですが、いざ役者さんが動いて画を撮って行くと、そのことに矛盾や、違和感を感じたりする事がでてきてしまいます。EXラーメン屋(鮮と幹が、晩御飯を食べている)での場面ははそんな点を補う為に撮影されました。で、ここのラーメンがまたうまいのなんの。こってりとした感じのスープなのに、喉を通るときはあっさりとまろやか。麺はしっかりと腰が強く、食べごたえのあるラーメンごちそうさまでした。


7月22日

7月22日(火)晴れ
ロケーションでの撮影が全て終わり後はセットを残すのみとなった。(私的にはかなりホーーーーッとしました。なぜってそれは雨で撮影撮り残しになってしまう事が一番怖かったですから。いやーよかったよかった。しかーしこの時の私は、肝心のメインタイトルバックのひまわり畑のロケーション大大大問題が勃発しようとは思いもしなかったのであります)撮影とは準備に(カメラポジション、照明セッティング等)結構時間がかかるため役者達の時間のつぶし方はそれぞれである。岡田君は前回でもお話ししましたように、いつでもどこでも、ウーンって悩める少年でいます。そして麗奈ちゃんは、この日「花より男子」のぬりえ(懐かしいぃ)を赤ちゃん役たくみちゃんのお姉さんである、まいちゃんと楽しんでおりました。麗奈ちゃんはほんとうに子供が好きみたいで、ずっと一緒に遊んでくれていた。これが本当に助かった。というのはこのまいちゃん、撮影には全く(あー思い出した、1カット御出演していただいております。公園で遊ぶ親子)関係なかったのですが、スタッフ他お母さんも含めて、赤ちゃんの方ばかりかまっていると、突然「おなかが痛ーい」と大声で泣きながら足をおさえるのです。母「それは足、おなかはココ(と指で指す)」まいちゃん「足が痛ーい(足をおさえる)」母「はいはい、おなかはもう痛くなくなったの?」と軽くあしらっている。仮病は一度しか通用しないということを早く学んで欲しい。


7月23日

7月23日(水)晴れ
昨夜の私はかなり興奮しておりました。と言うのは・・・・・・全国の小嶺麗奈ファンの方すみません。ごめんなさい。やりましたぁ。本当に申し訳ない。ジャーン昨日私はあの麗奈嬢とお風呂に入らせていただきましたぁのぉであります。そりゃぁもう旦那、彼女のお背中といい、おみ足といい、あんな所も、胸の脇になんねぇ・・・・えへへクフフ・・・っとこれ以上先は事務所サイドに止められておりましてぇ、わたくしとしては、こと細かーく実況中継したいのも山々なんですがぁ・・・・・・・って、実はなーんも見えなかったのですオーマイガットジーザス。ココであらかじめオコトワリしておきますが、私が入浴中に彼女が入ってきたのですからね。不可抗力ですょ。よって苦情等のメールはくれぐれもお断りさせていただいております。そして本題にもどりますとねぇ、何も見えなかったというのも、彼女が鉄壁のガードをしながら入浴したわけでもないのです。実はわたくし超ド近眼なのであります。マヌケデヒサンナオチでスミマセン。普段は眼鏡をかけながらお風呂に入るほどなのですが、この日に限って限って限ってカギッテ眼鏡は脱衣所においたまま、あぁあぁああなんと、もったいないことをしてしまったことか。やっぱり普通に興味あり、見てみてかったですよ、彼女の美しい裸体を・・・ボッ(ちょっと顔が赤くなりつつ、鼻の奥に血がたまったような)・・・麗奈ちゃーんプリーズカンバックツウミーマイニューヨク(ちょっと壊れてきたワタクシ)でも、ぼやーっとした輪郭の(近眼の為ピントがあってない)彼女は実に色っぽかったです。写真集の彼女から想像するしかないですね。トホホ。そしてこの後、眼鏡を無くしてしまい麗奈ちゃんに探すのを手伝ってもらった。眼鏡のバッキャロー。


7月24日

7月24日(木)晴れ
「10万本のひまわりがたった3本しか咲いてないんです。本当に、1、2、3(指でさす)本なんですよ。大山さんどうしましょう!(叫び)」
といわれても、「なぁーんで咲いてないんだよぉひまわりぃーっっ」と言う怒りの声を押し殺しながら、私は訪ねた。「何で咲いてないの?ひまわりさん」(言い方少しやわらかく)
「といわれてもー咲いてないんですモン」目の前の鮮やかな黄色の景色が、本当に真っ暗になり、クラゲになってしまった。あぁ、タイトルバックよ、どうすべか。思わず出た言葉が「わたしが手で、一つづつひまわりの花びらを広げてくるよ」なんて・・・出来るわけないでしょうが、10万本ですよ。10万。何日かかることやらって何日かかっても出来るわけないっつーの。どうすべ、どうすべ、どうすべどうすべどうすべ・・・「菜の花なら近くに咲いてるんですが・・・」同じ黄色でも全然違うでしょうよ。ひまわりは、太陽に向かって一途にまっすぐ向いている。明るく強く何があっても幹と生きていこうとする{鮮の象徴}なんだからぁ・・・(ちなみにこのホームページのひまわりもココからきている)そして、ひまわりは絶対諦めないぞ。と言う強い意志のもとに、「日本(仙台から西で、ロケバスで移動できる範囲で、撮影許可が下りる所)全国ひまわり畑を探す旅」に制作部が出発することになったのでした。「よろしくぅ。がんばって、なんとしてでも、見つけてきてくれー。全ては君にかかっているぅ。頼むぞー」
はたして、ひまわり畑はみつかったのでしょうか。タイトルバックはどうなったのでしょうか、こうご期待。
って、本当は頭が痛くてしょうがない。本当にひまわり見つかんのかよぉ。今から植えて3日後に咲かないか?10万のひまわりが明日に咲くって事はないか?造花を買ってきて植えるか?金がない?あぁ、撮影延ばすか?主演二人がいない。スタッフも次の仕事が決まっている?どうすべ、どうすべ、どうすべどうすべどうすべ・・・


7月25日

7月25日(金)晴れ
私の役所として、何としてでも思い通りのものを手に入れたいと力入れる、映画にとってもっとも重要不可欠な主題歌。私はクランクインする前からその曲を決めていた。この曲を聞いた時の衝撃といったらなかった。体中に電気が走り「これだぁこの曲しかない。ルースはこの曲で決まりだ。主題歌はこれで行くぞおー」と叫んでしまったほどである。(この曲に出会うまで何十曲とあらゆる曲を聴いていたが、どれもピンと来なかった)早速、監督にも聞かせると、とても気に入ってくれた。後は先方に承諾を取るのみだ・・・・が、すぐにOKをもらうことが出来なかった。ガーンガーンガーンガーンなぜなぜなぜ????先方としては、脚本から感じるイメージは曲にあっていると思うが、ビジュアル(映像)を確認してからでないと、承諾は出来ないというのである。もっともな言い分であった。私はすぐさま編集室に飛び、ラッシュを組んだ。用意出来たのは、歯抜けだらけのシーンを並べ、カット順にただつないだ、音のない映像だった。「こんなんでこの映画を分かってわらえるかぁ気に入ってもらえるかぁー(いらだつと出てくる関西弁)」と音楽プロデューサーとバトルした。しかし、早く決めないと撮影終了と同時に仕上げが待っている。なおかつ、私は第二候補の曲を全く決めていないと言うより探してもいない。不本意な段取りであったが、あたって碎けろだ。決戦はイマジカ第4試写室、この映画への想いと、いかにこの曲が必要かということを、私は言葉の限りを尽くして伝えた。燃え尽きた。だが不安である。


7月26日

7月26日(土)晴れ
岡田君の涙も、麗奈ちゃんの涙も、せつなくて苦しくてつらくて、胸が締めつけられた。
(紹介している写真は暗くてよく見えないかも知れませんが、芝居が終わった直後の、涙を拭っている二人なのです。とてもいとおしいキュッーってしたくなる) 「さみしい」こんな言葉を監督が言う。「さみしいね」私もその言葉しか出てこなかった。
本日はクライマックスの場面。出ていった幹が、鮮の誕生日の日に帰ってきて、今日を最後にもう逢うことはないだろうとお互い感じながら、二人は初めて結ばれる。というシーン。
「さみしい」「さみしいね」「あーさみしい」「ほんまさみしいな」「さみしいっすよ」「さみしぃよぉ」「んーさみしいなっ」「なんでこんなにさみしぃかなぁ」本当にこんな言葉しか出てこなかった。そして、この言葉をかわす以外の会話はなかった。私と監督の「さみしい」の感覚は少し違っていたが、二人とも「さみしい」の言葉しか出てこなかった。
監督を「さみしい」くさせたのは、主演二人の大きな成長にある。初日から数えて24日目、残り2シーン今日の場面とタイトルバック以外を撮りきった二人は鮮と幹になりきっていた。岡田君も麗奈ちゃんも芝居に関しての演出指導は現場で一切なかった。というより、する必要が全くないほどの完璧な仕上がりで、監督としての出る幕がなかったからである。
私を「さみしい」くさせるのは、この熱い現場が終わってしまうことである。「ア・ルース・ボーイ」という作品の名の下に集まってきた、役者さんやスタッフのみんなが、明日を終えると、別の作品のもとに行ってしまうからである。手塩にかけて育ててきた娘を、どこぞの知らぬ男に取られる心境みたい。(娘を嫁に出した事ないから本当の気持ちは分からないけど)他の女が俺を必要としている、と彼氏に去って行かれる心境みたいな。(経験あり)
「さみしい」一日だった。
その夜、芝居場のシーンをすべて取り終えたので、私の部屋で監督とワインをあけることにした。岡田君も部屋にきた。二人はなんだかポーォとした表情でゆっくりと呑んでいるが、殆ど会話はしない。私は二人の姿をデジカメにおさめると、たった一杯のワインに程良い酔いを感じながら、またこの二人と映画をつくりたいなと思った。


7月27日

7月27日(日)とっても晴れ
現場というバトルを無事生き抜くことができた。現場の皆様本当にお疲れさまでした。
しかし、明日からシアゲという真の闘いが始まる。 ファイト!


撮影日誌インデックス